過去の展覧会・活動
「久米邦武・桂一郎と有田瓷器」展 ~肥前の精美を世界の産業に~
期日:2007年9月29日(土)~11月7日(水)
佐賀に生まれ育った久米邦武は、父・邦郷が有田の皿山代官を務めたこともあり、陶磁器とは深いかかわりを保ちつつその生涯を送りました。
明治4年、久米邦武は岩倉使節団の一員として米欧12ヵ国を視察し、数多くの施設や工場を見学しました。その中でも各国の陶磁器工場は久米の関心を大いに惹くものでした。
郷里佐賀の有田陶磁器を念頭におきながら、欧米の施設や製品を見学したことは、報告書『米欧回覧実記』からも窺うことができます。すなわち、西洋諸国の陶磁器産業を参考に、殖産興業の考えから日本の陶磁器のあり方を探ろうとしたのです。それは、近代国家としての国づくりに不可欠な外貨獲得のための手段に、 陶磁器産業を基幹産業のひとつとして振興していく必要性を痛感したからでした。
帰国後の久米は、それを率先実行するかのように、有田の陶磁器関係の人脈をたどって「香蘭社」やそれに続く「精磁会社」の設立に参画します。「精磁会社」 は日本でもごく早い時期にかたちづくられた会社組織でもあり、経営方法や施設の整備などの点でも新しい陶磁器産業の形を模索するものでした。
また、邦武の長子・桂一郎はフランス留学中の1888年、バルセロナ万国博覧会の事務手伝いを依頼された際、出品予定の陶磁器のできばえに満足せず、手持ちの赤絵の置物を展示し金牌を受けるなど、日本の技術を世界に紹介するのに一役かいました。その後も生涯にわたり、芸術家としての審美眼をもって数多くの博覧会用務に携わりました。
本展では、当時の資料や実際の作品を多角的に展示することによって、明治期有田陶磁器の現状を紹介しながら、久米邦武・桂一郎父子の陶磁器に対するまなざしや姿勢を探りました。また、オープン初日には、古美術商で陶磁器研究家の蒲地孝典氏による記念講演会を行いました。
久米邦武旧蔵陶磁器「色絵雲霞地紋珈琲碗皿」 深海年木庵喜三製 明治8~12年 |
久米邦武旧蔵陶磁器「色絵垣根菊文コンポート」 精磁会社製(明治中期) |